新たな時が生まれる日。
―闇と、雲に覆われたCheydinhalは
――アタシの泣き顔を隠すために、在ってくれたのかもしれない。

「理解出来ないって言ってんの。
なんで今になって・・・そんな事、急に。」
背を向けるFine。それは拒否と逃避の合図だった。
「時が来たね、Fine。
あたしもそろそろ頑張らないと、ね。Fineに置いてかれるよ。」
黙って行くのは簡単な事。
でも、Fineにはちゃんと分かって欲しい。
Ariaには、そんな思いがあった。
「確かにアンタ、昔は言ってたよ・・・旅に出るってさ。
でも、何年も前の話だろう?
ずっとずっと、二人で頑張ってきたんじゃないか!
騎士にも・・・やっとなれたって言うのに。これからだって言うのに!」
なんで行ってしまう。アタシを置いていく?
そんな感情ばかりが渦を巻いた。
本当は、分かっているはずなのに。
「Fineは前に進んでるね。あたしも、凄く嬉しいね。
でも、あたしは進んでないよ。
それが、とても怖いよ。このまま終わりそうな自分が、とても怖いよ。」
Ariaが言う。
本当に、アタシってやつは・・・
つまらない事を言わせてしまっている。
全部、分かってること。
全部、分かってたこと。
全部、分からなくちゃいけないこと。
あの日、13のあの日・・・
泣いたアタシを見て、以来、Ariaは二度と夢を語らなかった。
でも確かに感じていた。Ariaは夢を諦めてはいないと。
ただアタシの夢の実現のためだけに、今は我慢してくれているんだと。
あの日までも、あの日からも
ずっとAriaはアタシを助けてくれた。共に居てくれた。
それが当たり前で・・・あって欲しかった。
当たり前だと、言い聞かせてきた。
だけど!

「どうしても行くって言うんなら・・・
けじめだけは、つけておきなさいよ。Aria。」
剣を抜く。思い出の剣。
昔、CheydinhalにDaedraが現れたことがあった。
応援が間に合わず、アタシとAriaだけで応戦していたのを覚えている。
その時アタシとAriaは・・・
いや、少なくともアタシは――
Cheydinhalを汚させない。その思いだけで戦っていた。
・・・その時が、初めてだったかもしれない。本気で死を覚悟したのは。
そう、
Ariaの斧も、このアタシの剣も、その時Daedraから奪ったものだった。
初めて人の役に立てたと、実感できた日でもあった。
そしてアタシは、今でも覚えている。勝利の後、誓い合ったこと。

「ありがとな。Fine・・・。」
剣を突きつけるアタシを見て、Ariaが少しだけ微笑んだ。
切っ先が震える。泣きたかった。
こんな送り出し方しか出来ない、不器用で最低なアタシなのに。
感謝される、資格なんてないのに。
本当に今『ありがとう』って言わなきゃいけないのは、
他でもない、アタシなのに・・・。
Ariaが斧を構える。
あの日あの場所で誓い合ったこと。
アタシ達の、もう一つの夢。
もう一つの目標。
『強くあること』
自分を守れる力があること。
他人を守れる強さがあること。
思いを貫く勇気があること。
人を思える人であること。
自分の夢を、掴んで離さぬ努力をすること。
アタシは、この町を守るために。
Ariaは、一人世界を旅する為に。
誰よりも何よりも『強くあること』
「いくよ・・・Ariaッ。アタシがアンタを試してあげる!」

思い切り剣を振り下ろす。ギィィン・・・と、激しい音がこだました。
刹那
弾かれるFine。
バランスだけはかろうじて保っていたが、
たった一合で、大きく後方に押し込まれてしまっていた。
明確な実力差。
自分がAriaより弱いことなんて、ずっと前から分かっていた。
それでも――
「Aria。アンタ魔法が使えないんだよ?
一撃で決めれないで、勝ち目あると思ってんの?ふざけないでよ!」
悪態をつく。次の一撃を振るう。

息が切れる。視界が揺らぐ。
それでも、
痺れる両手を心中で叱咤しながら、剣を振るった。
今すぐにでも剣を下ろして「アタシの負けだ」と言えば、
Ariaもすぐに止めるだろう。
でも、それは『手を抜く』ということ。
最後の最後がそんな事では、Ariaに申し訳なかった。

鳴り響く黒金の音。
それは永久に続くように思われたが、
終わりは唐突に訪れる。
揺らぐ足、感覚のない腕。
そんなFineを、横薙ぎの一閃が切り裂いた。

吹き出る血、飛ばされる体。
歪む視界の中で、
それがアタシが、最後に見た光景だった。




















































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